営業マン時代のある日、上司と僕と同期の3人で、赤い壁紙がお洒落なバルに行った。

そこは、上司と僕がたまに飲むお店で、店長とも仲が良かった。

店内に入り、席に着くと、いつもの通り、気さくな店長も僕らの卓に腰を下ろした。

ただし、その日は決定的に違う事があった。

なんと店長が酩酊していたのだ。

酔いどれた店長は、初対面の同期に、真っ赤な嘘を言い始めた。

「オレ、ヤ×ザと仲良いんだぜ〜」

……いきなり何なんだ!

それに対し、優しい同期は、愛想笑いをしていた。

すると、店長は箸を逆手持ちにし、同期の顔面に突き付け、

「この店の壁、真っ赤っかだろ?オレ、血が好きなんだよ」

そんなクレイジー過ぎる一言を放った。

流石に「ヤバい」と思った僕たちは、即座に退散し、危うく難を逃れた。

まさか店長がサイコ野郎だったなんて……。

ただ、ベロベロに紅潮した店長は、確かに「赤が好き」と言う嗜好を、体で表していた。

そして、何年か経った今、ふと思い出し、そのお店を調べたら、赤字だったからか店長がイカレていたからか、ちゃんと潰れていた。

もしかすると、今そこには、もっと"あか抜けた"お店が入ってるのかもしれない。

続・モッちゃん

以前にも書いた"モッちゃん"の話の続きだ。

"モッちゃん"とは成人式以来しばらく会わなかったが、再会は突然だった。

26歳の時、僕はお笑い芸人を目指すべく、勤めていた会社を辞めて、派遣バイトを始めた。

そして、その休憩時間、喫煙室紫煙を燻らせていると後ろから声を掛けられたのだ。

「ジュンペイ?」

振り向くと見覚えのある顔がそこにあった。

"モッちゃん"だ。

なんと"モッちゃん"は、僕のバイト先の協力会社で、社員として働いていたのだ。

何でも話を聞いてみると、"モッちゃん"は大学生活に馴染めず中退をして、その会社に就職したらしい。

偶然の再会……とは言え、僕からすると気まずい。

何故なら、成人式の時に皮肉のパンチラインをお見舞いしていたからだ。

あれだけ偉そうに言っていたのに、今の僕はバイト君で、社員の"モッちゃん"より下の立場に成り下がっている。

「これは何か言われる!」

ビクビクした僕だったが、結局何も言われず、むしろ二人ともあの頃より笑えていた……気がする。

きっと、大人になったと言う事だろう。

ちなみに、その時に盛り上がった話題は、"オナニーの頻度"についてだった。

大人だね。

面倒ごと

小学生の時に習っていた影響から、中学で剣道部に所属していた。

ただ、剣道は好きではなく、むしろ嫌いだった。

いくら防具を着けていても、ブッ叩かれると痛いからだ。

とは言え、しっかり部活には出ていた……が、ある日を境にサボり出すようになる。

それは、中学2年生の春の話だ。

授業中、急に熱っぽくなった僕は、風邪だと思い、早退を決心した。

しかし、それはもう5時間目。

終われば、すぐ放課後になる。

「それなら、部活だけ休もう」と考えた僕は、その旨を伝えに、部室へと向かった。

到着すると、顧問の先生は会議でおらず、外部から呼ばれている師範代のジジイだけがそこに居た。

「誰かには伝えないとなあ」と思った僕は、そのジジイに、自分の体調を伝えた。

すると、

……バチコンバチコーン!!!

なんと僕が無防備にも関わらず、竹刀で頭と腹をブッ叩かれた。

「風邪は一番のサボりの理由!あと、ワシは教師じゃないから手を出してもいいんだ!」

ゴミ理論を吐き捨ててくるジジイ。

クソか、お前。

その言動に腹を立てて、僕は幽霊部員と化す事となった。

あの日、とっとと帰れば良かったと心底思う。

メンドウに巻き込まれる前に。

天罰

一人のHIPHOPヘッズとして、再活動してほしいラッパーは数多く居るが、僕の中で不動の一位はヤツしか居ない。

そいつの名は"延暦G"、僕が大学時代に組んでいたラップグループの相方である。

彼は、僕に持っていない物を全て持っていた。

圧倒的な見た目のインパクト(和製フレイヴァー・フレイヴ感)、ハキハキした声質、そして何より豊富な語彙力とネタの引き出しの多さ。

そんな彼のラップの面白さは、他の追随を許さない。

……と、何で急にそんな話をし出したかと言えば、シャッフル機能を使って音楽を聴いていた際に、当時作ったデモ音源が久々に流れてきて、彼の個性的過ぎるラップに面喰らったからだ。

まー、結局、そのグループは喧嘩別れみたいな感じで終焉を迎え、空中分解となったのだが。

多分、今後も彼と一緒にラップをする事は無いだろうし、もしかしたら一生会わずに終わるかもしれない。

なので、この一ファンとしての声が、いつか届いてくれればなー、と切に願う。

お前のラップ、マジ最高だぜ。

あと、大学時代、丸坊主の彼を「ハゲ」と称していたにも関わらず、今の僕のデコが後退してきているのは絶対に天罰だと思う。

悲しい。

ヒールとベビーフェイス

今年、最悪な飲み会があった。

その日、ライブでウケた僕は、真っ直ぐ帰宅する予定を変更し、誰かと飲みたくなっていた。

そこで、相方の松井が約束をしていた女友達との飲み会にお邪魔させてもらったのだ。

出だしは上々、和気あいあいとしたトークに盛り上がる一同。

しかし、その中で、松井の女友達がポロっと発した一言に、僕は度肝を抜かれた。

「クボタさんってチンコちっちゃそうだよね!」

いやいやいやいや、初対面なのに何を言ってるんだ、こいつは。

あまりに礼節を欠いた言動にムカつく僕。

しかし、冷静に考えてみれば、ここまで不躾な女は、そうそう居ないだろう。

……あ!これはプロレスだ!

プロレスをしたがってるんだ!

そう思った僕は、ベビーフェイスとして、すかさずリングに上がった。

「◯◯ちゃんもマ×コちっちゃそうだね!」

完璧な切り返し。

だが、彼女(ヒール)は普通に憤慨し、最終的には「こんなめんどくさい人と飲みたくなかった」などと言う始末。

何だ、こいつ。

そこから地獄絵図と化した飲み会は、何故か松井が僕らに謝罪し、お開きとなった。

逆にごめん。

ちなみに言うと、僕は彼女の言う通り"粗チン"である。

一休さん

小学3年生のある日、クラス全体がガヤガヤうるさくて、担任の先生を怒らせてしまった。

「お前ら、遊びたいなら一生遊んでろ!」と言う言葉を残して職員室に戻る先生、しんと静まる教室。

そんな中、僕は立ち上がり、リーダーシップを発揮してこう言った。

「遊んでていいって言うなら、遊んでた方がいいんじゃない?」

アホ丸出しの僕。

こう言う時のセオリーは「先生に戻ってきてもらうために、みんなで謝りに行こう」だ。

そんな非常識な発言に全員が呆れ返った……かと思いきや、クラスの9割ぐらいもアホだったので、僕を筆頭に殆どの生徒が遊び始めた。

お喋りを楽しむ者、ボール遊びをする者、『ウォーリーをさがせ!』を読み出す者、学級崩壊ってこうやって起こるのかもしれない。

そして、残り1割の真面目な子が職員室から先生を連れ戻し、ちゃんと呆れ返ってくれた先生は、怒ることもやめて普通に授業を始めた。

好き勝手遊んだ上に怒られることも回避した平成の一休さん、ここに爆誕

ただ、思い返してみれば、まだ体罰も横行していた時代だったので、火に油を注いでボコボコにされた可能性もあったはずだ。

屏風の虎が出てこなくて本当に良かった。

m-floのVERBAL

これは僕の高校受験の話だ。

僕が通っていた高校は、入学試験が前期と後期に分かれており、前期試験は超難問レベルのペーパーテストと面接がメインで、ハイパー頭の良いヤツか学業や運動で好成績を残したヤツでない限り、受からないシステムだった。

言わずもがな、凡才の僕はペーパーテストのみの後期で合格した。

そんな試験のエピソードトークを、入学してから友達としていた僕は、友達の発言で、味わった事の無い羞恥心に見舞われる事となった。

「なんか前期試験の面接の時、オレの前のヤツ、尊敬する人物を聞かれて、VERBALって答えてたんだよね」

……僕だった。

当時、僕はHIPHOPにハマり出し、そのキッカケを作ったのがm-floのVERBALだったため、面接官の「尊敬する人物は?」と言う質問に、「m-floのVERBALです」と答えていたのだ。

もちろん、今でこそ分かるが、一般的な回答としてはズレている。

幸い、入学前の出来事だったおかげで、僕とは認識されておらず難を逃れられたが、ドイタな自分を突き付けられたようで、本当に恥ずかしかった。

もし、時を戻せるなら、あの面接に『come again』させてほしい。