チュッパチャプス

チュッパチャプスは最強だ。
 
 
棒の刺さったフォルムはアバンギャルドな睾丸と現代の若者らしいナードな陰茎を彷彿とさせるし、それを差し置いてもサルバドール・ダリが手掛けたデザインは消費者側のお洒落アンテナをビンビンにさせる。
サイケな色合いもまるでLSDを舌に乗せた時のようなトリップ感を味わえるし、口に咥えればHIPHOPカルチャー特有のコミカル且つサグな雰囲気も堪能出来る。
バスキアよりもイルマティックで、バンクシーよりもスタイリッシュだ。
 
 
まあ、そんな枝葉の部分はどうでもいい。
幹となる魅力的な部分は、何と言っても、味だ。
甘い。
甘過ぎる。
ニート野郎を過保護に育てるママンよりも甘いのだ。
甘いは美味い。
そこだけは覚えて帰ってほしい。
 
 
ただ、僕が好きだったオリジナリティー溢れる甘い味が無くなっていくことに一抹の悲しさも覚える。
特にマンダリンオレンジとチョコバナナの販売停止に関しては、よく遊んでいた幼馴染と大学でめちゃくちゃ仲良くなった親友を失くしてしまったような切なさがあった。
 
 
マンダリンオレンジは、デザートシリーズ寄りの僕にフルーツシリーズの魅力を教えてくれたフレイバーだ。
言わば、幼馴染グループの中でそんなに仲良く無かった一人が、共通のニッチなCDをキッカケに年がら年中一緒に居るような関係になった感じである。
「ジュンペイくん、Jurassic 5聴く?」
「え!聴くよ!マンダリンオレンジくんも聴くの?」
「うん。カット・ケミスト最高だよね」
……こんなの仲良くならない方がどうかしている。
周りがGReeeeNEXILEを聴いてる中、Jurassic 5を聴いてるヤツが居るなんて。
後にこの二人は、CDを貸し合ったり、MTVを一緒に見たり、文化祭でラップをしたり、同じカルチャーにどっぷりハマるブラザーとなる。
 
 
対してチョコバナナは、チョコもバナナも好きな僕が求めていたフレイバーをそのまま体現してくれた憧れの存在だ。
大学に入ってマンダリンオレンジと音楽活動を続けた僕は、同世代のスキルフルなラッパーを見付ける。
「こ……こいつ、オレがやりたいフローを全部やってやがる!」
それがMCチョコバナナだ。
衝動に駆られた僕は、全ての音源をチェックし、ライブも隠れて観に行くようになり、どちらかと言えば"羨望"より"嫉妬"なんて表現が似合うような感情が爆発していた。
しかし、僕たちウルトラチュッパチャプスMC'SとMCチョコバナナは偶然にも同じイベントに出演することとなる。
楽屋内で、こちら側の気持ちも考えず、彼は開口一番ヘラヘラ言うのだ。
「お前らのことチェックしてたよ。超気持ち良いライムばっか踏むじゃん!クルー組もうよ」
……この誘いに乗らない方法があるなら教えてほしい。
「いいに決まってんだろ」
 
 
だが、モラトリアムにも終わりは来る。
就職活動だ。
売り上げも伸びず夢を追い切れなかった僕たちのクルーは、現実の波に逆らえず呆気なく解散した。
 
 
就職した僕は、僕の元から去ったマンダリンオレンジやチョコバナナを横目に、まだ新しいフレイバーを探している。
ちなみに、僕はチュッパチャプスで"塩大福"味があったら、かなり美味いと思う。
森永製菓さん、宜しくお願い致します。
 
 
しょうもない話をしていると思った諸君、チュッパチャプスをナメんなよ!

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