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ベロネフォビア

尖端恐怖症である。
特に箸やフォークなどの食器類と傘に関してはてんでダメだ。

 

 

意識しなければ問題無くやり過ごせる。
だが、ふとした拍子に意識してしまったが最後で、尖った物の持ち主の一挙手一投足が気になって仕方無くなる。
もしかしたら、彼らの潜在的ドジっ子が急に姿を現し、パッとこちらを振り向いた際に無自覚な凶器(狂気ではない)が牙を剥くかもしれない、なんて考えてしまう。
……と、バカが回りくどく表現しているが、要は尖った物が目に突き刺さることをイメージしてしまうのだ。
一瞬でグロい想像が脳を蝕み、吐き気を催す。

 

言わずもがな、この症状は日常生活に支障をきたす。

飲み会では箸をアサシンのように逆手持ちする品性下劣野郎と膝を交えて話す事が出来ないし、雨の日なんて傘をブンブン振り回すクレイジーババアを見掛けたら脱兎のごとく離れなければ死活問題となる。
雨に唄えば』は僕にとってのレクイエムだ。
大好きな漫画に関しても、『闇金ウシジマくん』の1巻で電線?を尖らせ目に突き刺すシーンは読んだ瞬間にリバースしそうになったし、『ドラゴンボール』や『HUNTER×HUNTER』の目潰し描写は老眼ジジイのようにかなり遠目で読んで難を逃れた。

 

 

キッカケとなったであろう出来事は、何となく見当がつく。
従兄弟とのある出来事だ。
僕は高校生ぐらいで、従兄弟は保育園に行くか行かないかぐらいの年齢だった頃だと思う。
当時、僕と従兄弟は定期的に開かれる親戚の集まりに参加していた。
こんな書き方をするとかしこまった場に聞こえるかもしれないが、別に大それた会合とかではなく、単におばあちゃんの家で集まって飲んだり食べたりするやつである。
僕の事をいたく気に入っていた従兄弟は、隣り合わせで座りウィンナーや唐揚げと言ったお子ちゃまメニューを頬張っていた。
その時、事件は起こる。
うちの親父が従兄弟の名前を呼んだのだ。
その声に反応し勢いよく振り向いた従兄弟は、片手に握られたフォークを無意識に隣の僕の目ん玉へと突き立てた。
振りかざされた鋭利なそれは、僕をベロネフォビアに導くには分かりやす過ぎる存在だった。
今も網膜に焼き付いて離れない。

 

 

この一件があってから、僕は角張った物、先の鋭い物を意識してしまった途端、脂汗が滲むような体質になってしまった。
とは言え、こんな自分を認めるのは格好悪い。
絶対に受け入れたく無い。
ダサい。
アニメ『空中ブランコ』の中でも尖端恐怖症のヤクザが居たがああはなりたくない。

何も恐れない男になりたいのだ。
芯の揺るがぬ呂布カルマのようなサブカルサグでありたいのだ。
インテリジェンスを持ち合わせたチンピラでありたいのだ。
まあサグでもチンピラでもないけど。

 

 

その話を飲み会で話すと品性下劣野郎の友人がこう言ってきた。
「尖端恐怖症が尖った性格してんじゃねーよ」