頬を赤らめた女性に、ときめかない男性は居ないだろう。
チークで人工的に染めた赤ではなく、玉のような肌を血が巡る人間味ある赤なら、なお心動く。
好きな人と初めて手と手が触れ合う瞬間、身体を重ねる瞬間、紅潮した顔は更に愛を深める。
色恋沙汰に関する事でなくたっていい。
何かを照れて恥じる時に出るそれは、熟れたての果実のようにも見える。

 

 

幼少期の僕は、クソガキであるにも関わらず、生意気にもその魅力を知っていた。
もちろん、先述した小難しい表現ではなく、
「恥ずかしがってる女の子って可愛いなあ」
ぐらいのものではあったが。
まあ、人間で産まれた以上、遺伝子でそう言う風に組み込まれているのだろう。

 

 

しかしながら、そこはクソガキ。
見た目は言わずもがな、恋愛の"れ"の字も知らない子供では、テクニックやトークスキルも持ち合わせていない。
ならば、どうしよう。

 

 

「そうだ、チンコ見せればいいんだ」

 

 

グッドアイディア。
自分を天才かと思った。
これで幼稚園中の女児はオレの虜だぜ、へへ。

 

 

そこからは善は急げ。
行動に移すのみ。
トイレから出た直後に、ペロン。
廊下の片隅で、ペロン。
園庭で、ペロン。

 

ペロンペロンペロンペロンペロンペロンペロン。

 

 

かのクラシックの天才であるモーツァルトも似たような事をしていたと聞くが、まさか平成の日本男児が同じ事をしているとは誰も思わないだろう。
神童である。

 

 

だが、真の芸術は一般人に理解されないのが世の常。
たちまち、園内の噂となった僕は、先生に呼び出され、しこたま怒られた。

 

 

「自分が何やってるか分かってる?」
「おちんちん出してた!」
「おちんちんを見せるのが、良くない事って分かってる?」
「わかんない!」
「はあ……」

 

 

電話に手をかける先生。
何やってんだよ、勘弁してくれ。
その思いむなしく、無情にも数十分後に駆けつける母親。

 

 

「あの、お宅のジュンペイくんが、その、何て言うんですかね、おちんちんを女の子に見せちゃうんです」
「すみませんすみません。私の方から言っておきますので」

 

 

母親は、先生にペコペコ頭を下げていた。
その光景は、自分の奇行を悔い改めるのに十分な理由となった。
まさか大切な人の赤らんだ顔を、こんな風に拝む羽目になるなんて。

 

 

帰り道、母親は反省している僕に優しい言葉をかける……事は無く、めちゃくちゃブチギレてきた。
「あんた何やってんの?!お母さん、情けない!もう!ただでさえ忙しいのに、こんな下らない事で呼び出さないで!」
怖い。
鬼の形相だ。
スーパー泣いた僕は、"無闇におちんちんを出してはいけない事" とは別にもう一つ学んだ。
人間は恥ずかしがる以外でも顔が真っ赤になる、と言う事。

 

 

その日の夕焼けは、いつも以上に赤く見えたとさ。